こんにちは。8chunmama(はっちゅんママ)です。
税理士業界の繁忙期は、年末年始の年末調整業務から始まります。
年末調整は通年でする作業ではないので、手順や法令、所内ルールを翌年の年末調整ではすっかり忘れている、ということが多々あります。
私の感覚では、3年目くらいでやっと作業の意味が記憶として定着していると感じるかなというところです。
初めての人は分からないことだらけかもしれませんが、そんな税理士業界の新人さんも、ベテランさんも、気楽な感じで年末調整あるあるを読んで、共感でストレス発散をし、作業のミスを防ぎ、1つでも記憶を定着させるのに役立ててもらえたらと思います。
適宜、関連する国税庁ホームページのリンクを貼っていますので、併せてご確認ください。
顧問先あるある
- 国民年金保険料は控除証明書が必要なのに、納付書を提出してくる
提出の必要性で二重提出のリスクまで説明してしまうと、「ウチの従業員が信じられないっていうのか?」という顔をされます。
- 自治体の国保の金額が書いてあるが、支払いベースではなく年度ベースの金額になっている
その年中に支払った額、なので、年度ベースで書かれていると正しくありません。
経営者一族で資料を提出している場合は年度ベースなんだなと分かることがあります。
しかし、証明書添付の義務がないですし、年間納付額のお知らせハガキが年内に来ないので、本来あるべき数字ではないことに気付かずそのまま処理してる場合も、実は多いのかもしれません。
- 「医療費控除してくれるんですか?」「ふるさと納税の資料要りますか?」と聞かれる
- 聞いてくる人は、だいたい毎年同じ。
丁寧に対応しましょうね。
- 「市にはこっち(顧問先)で提出するんで」と自分で提出したがる
ほんとにちゃんと出すんですか~?
と思うけども、そこは顧問先との信頼関係。 最近は、あんまりそういう会社はないかもしれません。
- 保険料控除申告書を自分で記入してくれているが、保険の種類は「年金保険」だけど「一般」の生命保険料なのに、「個人年金」の欄に記入している
そっとシャーペン書きで訂正してさしあげましょう。 くれぐれも、税理士事務所スタッフは間違えないように。
- 外国人実習生の扶養親族の人数がとても多い
- 別居の親族には送金の事実確認書類が必要だが、外国の事情によっては皆が皆、個人の銀行口座を持っているわけではない
別居親族を扶養家族に入れるのは要件が厳しくなりました。 税務調査で法人税の所得漏れがなければ、ここを突いてこられるかも。
給与等または公的年金等の源泉徴収及び給与等の年末調整において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は、その国外居住親族に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」、「留学ビザ等書類」、「38万円送金書類」を源泉徴収義務者に提出し、または提示する必要があります。
国税庁ホームページより抜粋
詳しくは下記のQ4及びQ4内のリンク先PDFのパンフレット「令和5年1月以後に非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」を確認してください。
- 「自分で確定申告するんで、年末調整はイイです。」と言う
そういう問題じゃないねん、年調対象者は全員年調せなあかんねん。
- 年調不足額が出て還付にならず追加徴収になった場合、従業員さんから直接お電話が掛かってくる
お子さんが4月から扶養親族から外れていたのにそのままにしていたとか、賞与の税率が規定通りではないとか、賞与が毎月の給与にしては高額だとか、そういう理由が考えられます。
年末調整不足額が出た人については、理由を追究しておき、聞かれる前に納品時にご説明するのがベストです。
私がこういうお電話に対応した時は、(つまりは先にご説明していなかったわけですが、)賞与の計算を自社でされている会社の、立場が上のほうの方からでした。 「〇〇さんは他の方よりお給料の金額がだいぶ大きいので、ボーナスでもっと源泉を引かないといけなかったんですけど、他の方と同じ率の〇パーセントしか引いてなかったみないなんです~。お給料が高いと最終的に掛ける一番上の税率が変わってくるので~・・・。」と、「アナタは高給取り」を強調したところ、「そうか、そうか。」とまんざらでもない感じの反応で丸く収まりました。
もし賞与の計算を税理士事務所で請け負っていたら、平謝りだったでしょうね。
- 入って数日で辞めたバイトさんの住所が分からない
普通は履歴書があるはずですが。
- 2年スパンくらいでしょっちゅう引っ越している人がいる
更新料発生のタイミングで引っ越しているんでしょうか。
ゼロゼロ物件(敷金・礼金ゼロの物件)?
引っ越し費用もかかるでしょうに。
- 「保険入りすぎやろ。」「子どもさん多いのに保険入ってなくて大丈夫?」と余計なお世話を思ってしまう
保険に対する考え方は人それぞれなんだな、と感じます。
- 今回出された扶養控除等申告書から親御さんの名前が無くなっている
- 「配偶者 有」だった人が「配偶者 無」になっている
「ご記入がありませんでしたが、今年は扶養は無し(〇〇様と△△様の●人)でよろしいですか?」って聞くんですよ。 「亡くなられましたか?」「離婚されましたか?」なんて聞かないんですよ。
- 子どもの姓が従業員さんと異なる
「ひとり親」の可能性大。
配偶者の有無を必ずチェックしましょう。
年末調整作業&スタッフあるある
- 黙々とひとりで作業していると、目の前の資料から妄想が広がりがち。
その妄想でこの記事を書いています。
- 長年、年末調整をしている人の名字が変わって、「配偶者 有」になっていたら「おめでとう~~!」と思う
- それがその会社の社内結婚だと更に嬉しくなってしまう
摘要に「旧姓:〇〇」って入力してくださいね。 住所変更がないかの確認も忘れずに。
- 社会人1年目のスタッフには、年末調整の何たるかから説明
アルバイトでたくさん稼いでいた人は知っているかもしれません。
しかし、「誰でも最初は初心者」。
(※このブログのコンセプトの一つです。)
丸投げ厳禁です。
見たら分かるやろ、分からんところは聞いて、ではダメです。
まずは自分の保険料控除申告書を書くところから始めてもらいましょう。 と言っても、生命保険に入っている人は少なく、国民年金は親御さんから控除、が多いんでしょうけど。
- 税理士試験の科目合格者の1~2年目の人より、ベテランのパートさんのほうが年末調整スキルが高い
担当者の先輩に聞きにくかったら、ベテランの入力スタッフさんに聞いて解決することもたくさんありますよ。
- 扶養控除等申告書のキラキラネーム・難読漢字に色々と思う
- 事務所内の同僚から年賀状が来て、子どもがキラキラネームだと知ってから所内でキラキラネームというワードを言いにくくなる
- 最近は年末調整対象者本人の名前がキラキラしてきて時の流れを感じる
- 平成生まれの従業員さんが家庭を持っていて時の流れを感じる
- シワシワネーム(古風な名前)が増えてきたのは本当だなぁと思う
- 社長のマル扶で、社名の由来がお子さんの名前だと気付く
- 外国人従業員さんの名前の読み方が分からない
フリガナが振ってあっても、それが日本語の書き馴れない人だと、結局その解読も困難だったり。
- 税理士業界の人や労務・総務の人となら、年末調整あるあるで初対面でも盛り上がれる
飲み会で話題が尽きたら、守秘義務の範囲内で年調あるあるの話題を振りましょう。
- 「『普通徴収』って何ですか?」と聞かれる
普通徴収は納税者が自分で納付、特別徴収は給与支払者が納税者に代わって納付。 私は社会人1年目のときに、年末調整よりも前に会計入力で「『特徴市民税』って何ですか?」「『特別』じゃなかったら何なんですか?」と聞きました。
- 今年亡くなった人は扶養に入れられるか、覚えられず毎年検索する
これを機に覚えてください。
その年中に亡くなった人は、その年の扶養に入れられます。
(扶養親族等の判定の時期等)
所得税法85条3項(下線は筆者による)
第八十五条 3 第七十九条から前条までの場合において、その者が居住者の老人控除対象配偶者若しくはその他の控除対象配偶者若しくはその他の同一生計配偶者若しくは第八十三条の二第一項(配偶者特別控除)に規定する生計を一にする配偶者又は特定扶養親族、老人扶養親族若しくはその他の控除対象扶養親族若しくはその他の扶養親族に該当するかどうかの判定は、その年十二月三十一日の現況による。ただし、その判定に係る者がその当時既に死亡している場合は、当該死亡の時の現況による。
- 「12月23日が祝日じゃなくなって楽なりましたよね。」「あれはしんどかったですね。」という話題になる
- そして「でも、2月23日が祝日になるのもしんどいですよね。」と続く
暦が変わってもキビシイ「20日締め25日払いの年内年調」。
- 12月に税制改正大綱が発表され、所得税減税の話が出ると、「年調でややこしいことせんといて!」と思う
人によって適用されるかが違う、というのがソフト上で手動操作になりそうな適用要件だと「やめて」と思います。
- 年末調整2回目の人でも、去年したはずの作業のことをすっかり忘れている
- ベテランでも、「ひとり親」「寡婦」の定義を毎年忘れる
「人間だもの。」
所得基準は500万円です。
覚えた!
- 「なぜこの人の生命保険料控除が表示されない!?」と焦ったら、給与が2000万円を超えていた
役員で、確定申告も請け負っている人の場合は、控除証明書関係は確定申告まで保存しておくのがよいでしょう。 (所内ルールを確認してください。)
- 社会保険料合計が集計されていない給与台帳を残念に思う(←婉曲表現)
この場合、電卓で集計するのではなく、社会保険料の項目別に入力できる画面から入力すると、かえって効率が良いときがあります。
健康保険料と介護保険料の入力欄が別々になっていないときもありますので、そこは要確認です。
- 印刷したい様式がどこから印刷できるかが慣れず、勘で押してみるとハズレる
印刷前のプレビューは必須。 誰かにお願いするときも、書類名・様式名は正しく伝えましょう。
納付書・法定調書・合計表あるある
- 11~12月の、イレギュラーな社労士報酬や司法書士報酬を確認し忘れる
そうなったときどうするのか?、というのは、周囲に口頭で聞いてください。
- 前年の年調超過額の控除を忘れる
年末調整は、前年の処理も確認するのが大切です。
新人さんには、年調超過額の何たるか、からちゃんと説明してあげましょうね。
- 行政書士報酬は源泉徴収しないし、法定調書の提出義務もない、と毎年確認してしまう
もうこれで覚えましたね。
- 司法書士報酬は1万円を引いて源泉税率をかける、というのを初めて知る
会計入力をしているときに違和感から気付けていたら◎ 1万円の報酬が多くて気付かなかったかもしれませんが、司法書士報酬が源泉徴収の対象じゃないわけではないんです。
そんなに頻繁にあるあるだったら大きな声で言えない「ミスあるある」
- 社会保険料と源泉所得税と住民税の金額を入力し間違う
住民税は100円単位(7月以降は通常は同じ金額)、源泉所得税はたいてい10円単位、社会保険料は1円単位ですので、参考にしてください。 (なので、Wチェックのときに上司や先輩は普通はミスに気付きます。)
- 課税支給金額を入力するべき箇所に非課税通勤費も含めた総支給金額を給与の額として入力してしまう
税務ソフトによっては、「総支給金額」「課税支給金額」と表示が切り替えられる場合があります。
経験者が当たり前と思っていることも、初心者には説明しないとダメ、という典型的な事柄。
- 課税交通費の入力を漏らす
課税交通費、たまーにあるんです。 ガソリン代とか自転車の人が該当しやすいです。
- 冬季賞与の有無を確認し忘れて、12月の会計データが来て賞与が出たと分かってから慌てて再年調
前年は支給がなかったから、ではなく、「念のための確認」をして処理担当者としての責任を果たしましょう。
- 退職していない人に退職年月日を入力してしまう
普通は最終チェックで気付きますが、乙欄源泉の人に間違って入れてしまったときは気付きにくいかもしれません。
- 身体障害者と同様、精神障害者も2級から特別障害者だろう、と思ってしまう
違います、1級のみです。
(3)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人 このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。
国税庁ホームページより
その他については、こちらをご確認ください。
また、障害者手帳は毎年コピーを提出してもらいましょう。
数年ごとに更新するものもありますし、快復や重度化などで等級が変わる場合があるからです。
「状態が良くなったり、その逆もありますので、確認のために毎年みなさんにご提出をお願いしているんです~。お手数おかけして申し訳ございません~。」と言えば、疑っている感がなく、角が立ちません。
- 給与支給額も社会保険料も丸ごと別人と入れ違いに入力してしまう
このまま源泉徴収票をお渡ししてしまうと、解約にもつながる信用問題です。
名前と給与と保険料控除の入力対象間違いがないかは必ずチェックしましょう。
各人別に一年分を見渡したり、前年と比較すると違和感で気付くはずです。
退職した税理士事務所から、私の名前で他の人の金額が入った源泉徴収票が送られてきたことがあります。
辞めて良かった、と心底思いました。
(税理士事務所が税理士の源泉徴収票を間違えてどうする。)
まとめ
今回は、小ネタも、ためになることも、盛り込んだ記事でした。
今年共感できなかった初心者さんも、きっと来年は「あるある」と思えるはずです。
ベテランさんは、職場で印刷して参考資料として新人さんにお渡しするのであれば、こちらの記事をどうぞ。
今回触れていないポイントも解説しています。