年末調整の実務ポイント② 保険料控除申告書 その2

実務
8chunmama
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こんにちは。8chunmama(はっちゅんママ)です。

前回の記事から、他のシリーズを少しお休みして年末調整の実務ポイントをご紹介しています。
今回は前回に引き続き、「保険料控除申告書」(以下、「マル保」)についてです。
前回の記事と併せてご参考にしていただければ幸いです。

※年末調整の各書類の記入方法は他に分かりやすいサイトがあるのでこちらでは解説いたしません。
※この記事は令和3年11月15日現在の法令に基づいて作成しています。

「地震保険料控除」欄

「旧長期」が何か、はここでは省略します。控除証明書にそう印字されていれば、控除の対象としてください。地震保険料控除で気を付けたいのは次の2つです。

マイホーム購入と地震保険の新規加入

このポイントは二つの意味で大切です。
一つは、今まで地震保険に加入していなかった人が、転居をし、地震保険に加入した場合、マイホームを購入している可能性があるということです。
住宅を購入した年は確定申告により各納税者で住宅借入金等特別控除を受ける手続きを行うため、その年の年末調整には関係ありません。しかし、翌年度より回収すべき資料が増えますので、今年のうちに紙またはデータ上にメモ書きをして来年の年末調整をする人や未来の自分に申し送りをしておきましょう。(※住宅購入者全員が住宅借入金等特別控除を受けられるわけではありません。)
もう一つは、これとワンセットの考え方で、これまで地震保険料控除を受けていなかった人でも、マイホーム購入で新たに地震保険に加入している場合があるということです。
前年に地震保険料控除を受けていなくても、「住宅借入金等特別控除申告書」を提出している人には地震保険に加入していないか念のため確認してみましょう。ただし、地震保険に加入しない人もいますので、決めつけた聞き方はせず「もし加入されていたら、」というように、やんわり確認したほうがよいでしょう。

地震保険料は変動する

生命保険契約は保険料が前年同額のことが多いですが、地震保険料は保険会社によって1~2年で都道府県別に見直されることがあります。「控除証明書をなくしたけど請求しているから、とりあえず去年と同じ金額にしておいて。」というのが必ずしも通用しません。地震保険契約は最長5年で、その間は変動しませんが、今年が何年目かが分かるかといえば難しいですし、そもそも証明書の提出が適用要件ですので、本来は仮の数字で控除ということはするべきではありません。控除証明書が発見または再発行された時点で、年末調整のやり直しか確定申告で正しく税額を計算しなおすようにしましょう。
なお、控除証明書はこれまでよりも簡単に再発行依頼ができるようになった保険会社も多いので、年内に請求すれば1月末までに年末調整のやり直しをすることは可能かと思われます。

「社会保険料控除」欄

この欄に記入するもの

社会保険料は毎月の給与から天引きされていることが多いですが、給与天引きの社会保険料はこの欄には記入しません。
この欄に記入するものは、以下のものがあります。
・国民年金
・自治体の国民健康保険
・給与天引きされていない、国民健康保険組合の保険料(建設国保など)
・国民年金基金

国民年金を納めうる人

国民年金を納めうる人には、次のような方々です。
・満20歳以上で新卒採用された人
・扶養している子が20歳以上である
・失業期間が1か月以上あり、家族の扶養に入っていなかった人
・失業期間は家族の扶養に入っていたが、失業給付を受けていた期間は扶養から外れていた人
・その会社が個人事業者で、常時使用する従業員が4人以下のため、社会保険に加入していないため国民年金に加入している人
・いわゆる「130万の壁」を超えたが、週30時間未満の勤務だった(※所定労働時間が40時間の場合)等、その会社の加入要件を満たさなかった人
・配偶者・扶養親族が上記の状況にあり、その配偶者等に代わって納付していた人

自治体の国民健康保険を納めていた可能性のある人

・失業期間が1か月以上あり、家族の扶養に入っていなかった人
・失業期間は家族の扶養に入っていたが、失業給付を受けていた期間は扶養に入れなかった人
・その会社が個人事業者で、常時使用する従業員が4人以下のため、社会保険に加入していないた
国民健康保険に加入している人
・いわゆる「130万の壁」を超えたが、週30時間未満の勤務だった(※所定労働時間が40時間    の場合)等、その会社の社会保険の加入要件を満たさなかった人
・配偶者・扶養親族が上記の状況にあり、その配偶者等に代わって納付していた人

自治体の国民健康保険で注意すべきこと

自治体の国民健康保険は、建設国保等と異なり、年間の納付額の証明書を発行して年内に郵送してくれるということはありません。確定申告の時期にハガキ等で送られてくる場合が多いのではないでしょうか。
毎月払いでもなく、年度途中で保険料が増減することもあり、また納付額の区切りが暦年ではないため参照すべき自治体からの資料が2年度分にまたがります。正しい保険料の額を把握するのには、「一定の資料の読み取り知識」「納付書」「通帳のコピー(口座の取引明細)」のいずれかが必要となってきます。その年中に実際に納めた金額がいくらであるかを集計するように気を付けましょう。また、納税者本人が自己申告で書いていて参照できる資料が添付されていない場合には、事務所の方針を確認し、それに従いましょう。
なお、年金から天引きされている介護保険料はその年金を受給している本人の社会保険料控除となりますので、扶養親族等の年金天引きの介護保険料は含めないようにしましょう。

「小規模企業共済等掛金控除」欄

この欄に記入するもの

この欄に記入がある人は一昔前までは経営者一族だけに近いものがありましたが、最近はそうではありません。この欄に記入するのは以下のもののうち、給与天引きではなく本人が直接支払ったものです。

・独立行政法人中小企業基盤整備機構の掛金
・iDeCo等の確定拠出年金の加入者掛金
・地方公共団体が条例の規定により実施するいわゆる心身障碍者扶養共済制度で一定のものの掛金

iDeCoの加入者が少しずつ増えて、控除証明書を目にする機会が増えてきました。この控除証明書は国民年金の控除証明書の読み取り方に近いです。

iDeCoのうち、iDeCoプラスは本人が1,000円以上負担すれば会社が福利厚生の一環として1,000円以上を負担し(これらの合計掛金は月額23,000円を限度とする)、全額損金算入できるものです。こういった場合には通常は給与から差し引かれているでしょうし、本人の掛金額の控除証明書も発行されません。また、月々の給与でiDeCoプラスの本人負担分を「社会保険料等の金額」に含めて源泉税額を計算しているべきものです。
しかし、正しく処理ができていない場合も多いと考えられます。その場合には、このマル保の欄で計算に入れて帳尻を合わせる、というのが、これまでの給与明細を修正しなくてよい簡単で穏便な方法ではあります。
来年からは本人負担分を「社会保険料等の金額」に含めて源泉税額を計算するようにし、その会社が自社で計算している場合にはその旨伝えましょう。
一番してはいけないのは、iDeCoプラスの本人負担額があると会計入力をしていて分かっているはずなのに、毎月の給与計算に反映させず、年末調整でも反映させないことです。監査担当者やいつもの会計入力担当者ではない人が年末調整だけを作業したときに起こりうる事故です。控除証明書がないので十分にあり得ますし、会計入力担当者が年末調整をしても、そこまで気が回らないこともあります。(人間だもの。)監査担当者は年末調整担当者にiDeCoプラスがある旨の申し送りを忘れず、最終チェックでも確認しましょう。

iDeCoプラスの本人負担額を「社会保険料等の金額」に含めることについては
納特(のうとく)の実務ポイント 担当者向けに留意点・勘どころを解説

の「入力されたデータは本当に正しいか」をご参照ください。

落とし穴だらけの「小規模企業共済」

・月払の金額のみが印字されている
小規模企業共済に満額・満期はないそうですが、それでも月額×12が納付額とは限らないのが厄介なところです。
年度途中に加入している、年度途中に「月払→年払」「年払→月払」に変更している、年度途中に解約・共済金の受取があった、ということが考えられます。
「9月分まで払込済(払込継続中)」とあれば、生命保険料と同様、通常は「月額×12」をしてよいはずですが、途中まで年払いだったとか、10月分以降に年払いに切り替えている、という可能性はゼロではありません。
この共済に加入できるのは法人役員や(年末調整をしない)個人事業主だけですので、比較的連絡が取りやすいかと思います。税理士事務所が異動の手続きをしていない場合には、その年の掛金の額はいくらだったのか、本人に確認しましょう。
控除証明書から読み取れることとしては、
年度途中に掛金の支払いをコロナ等の関係でストップしてもらった→「掛け止め期間」として印字     されている
月額の異動があった→異動前の月額が印字されている
前年以前分の掛金を遡って納付した→備考欄に印字される
などがあります。これらは見落とさないようにしましょう。

・前納減額金があるのに掛金の額から控除し忘れる
前納減額率が改定されて発生するのが毎年ではなくなってしまい、すっかりレアになってしまった「前納減額金」。これは掛金の額から控除しなければいけないものです。
最大でもわずか1,440円程度のものですが、千円を超えると年税額が変わってしまいます。
四角の枠内の左下・備考欄上にある「前納減額金」は「0円」になっているかどうか、必ず確認しましょう。

小規模企業共済掛金の控除証明書についての詳細は
独立行政法人中小企業基盤整備機構ホームページの
令和3年「小規模企業共済掛金払込証明書」について

をご覧ください。

マル保の提出がない人

マル保の提出は全員ではなく、該当する人のみです。保険料控除はない旨を記入して提出してもらうと、資料の有無を念のために確認したり遅れた資料を待ったりせずに税額計算に入ることができますが、回収する資料が多くなることを嫌う事務所・コピー枚数が増えることを嫌う会社はそれをしないかと思います。
保険等を一切掛けていない人の他、下記に当てはまる人は提出しない(提出しないこともある)ので、あまり執拗に提出を要求しないようにしましょう。

2か所から給与を貰っていて、その会社の給与は従たる給与である

この人は俗に「乙欄の人」と呼ばれる人で、その会社では年末調整をすることができません。したがって、マル保の他、扶養控除等申告書の提出もないはずです。掛け持ちバイトの人のほか、2以上の会社を経営している人などが当てはまります。
年末調整をしない人ですので、マル保がなくても何ら問題はありません。

自分で確定申告するから、という人

自分で確定申告をしようがしまいが、対象者である以上は年末調整をしなければなりませんが、保険料控除を給与で受けるかどうかは自由です。
提出しない意思を確認したら、その通りにしておきましょう。

給与の額が低い人

保険料控除をしなくても税額がゼロなのだから、と申告書や控除証明書の提出を面倒がる人もいます。また、配偶者の扶養に入っている場合、その配偶者が保険料を負担しているかもしれません。
税額がゼロなのですから、本人の意思を尊重してあげましょう。

学生のアルバイト

学生で生命保険料等を自分で払っている人はごくごく稀ですので、マル保の提出がないことも当然あります。
ただし、20歳以上なら国民年金を自分で納めていることもありますので、納付の有無を念のため確認しましょう。所得税・住民税の所得割の発生ラインにも留意したほうがよいかもしれません。
また、学生には勤労学生控除が適用されますので、103万円超の場合には特に、学生証のコピーを提出してもらい、勤労学生控除を適用して年税額を計算しましょう。

年末(年末調整の資料回収時)までに退職している人

この人は令和3年の扶養控除等申告書の提出があっても、令和4年の扶養控除等申告書の提出はマル保と同様にないはずです。給与台帳で分かることもありますが、給与が当月締め翌月払いの場合は12月に支給があれば気付くのが遅くなることも。
年末までに退職した人は退職日も併記したリストをもらうようにしましょう。

特殊なケース・よくある質問

特殊なケース、「あるある」のケースをご紹介します。

産休・育休中の人

当年(年末調整対象年)中に産休・育休に入った人も、当年中に給与の支給を受けている場合には年末調整の対象となります。フルタイム勤務で4~5月以降に産休に入った人は所得税額・住民税額が発生することもありますので、生命保険料控除等ができる旨、本人に伝えてもらいましょう。会社との連絡が密でない等、資料回収に時間がかかりそうな場合もあるでしょう。電子的控除証明書を採用していなくても、取り急ぎ写真のメール添付やFAXでの資料のやり取りをし、先行して年長計算を進めます。会社と納税者本人(と所属事務所)の承諾を得たときは納税者本人と直接やりとりをして資料回収をするのも一つの手です。
産休・育休中の人に限ったことではありませんが、なかなか資料データの提出をしてくれない人もいます。資料回収のお願いは必ず期限を明示しておき、それに間に合わない場合には年末調整を行わず「年調未済」で源泉徴収票の発行をして、納税者自身に確定申告をしてもらいましょう。

保険契約を全部入れなくても控除の上限額に達する場合

提出された資料はすべて入力しておくのが無難です。もし入力欄が足りない場合は最終行に「その他〇件合計」等として個別入力したもの以外の保険料額を入力しましょう。

年払いの保険契約の引落日が12月、控除証明書の発行が年明けになる場合

この場合には、年内は取り急ぎ保険会社が気を利かせて発行している「ご案内」ハガキなどを提出してもらって金額を確認し、1月に発行され次第、控除証明書を提出してもらいましょう。

保険契約者と被保険者の名字が異なる

・結婚して間もないため保険会社に改姓の手続をしていない妻の保険契約の保険料を、夫が負担している
・「離婚し復姓した母」と「父の名字を使い続ける子」の名字が異なる
・再婚後に親と子(義理の子・旧姓を使い続ける実子)の名字が異なる
・子どもが結婚後も保険料を支払っている
などの理由が考えられます。扶養控除等申告書も併せてチェックしましょう。

国民年金を2年分前納している人

国民年金保険料は2年分を前納することができ、その納めた年に全額を社会保険料控除の対象とすることができます。
ただし、その国民年金保険料を各年分に控除することを選択した場合には、控除証明書を書く年分ごとに切り取って提出することになっています。
控除証明書のハガキをそのまま提出されている場合、敢えて全額控除を選択しているのか、深く考えていないのか、分からない場合も多いかと思います。1年分で十分に税額がゼロにできる、役員のため来年の報酬が見通せる人で限界税率(最高税率)が僅差でアップしている、など、税効果として不利な選択をしていると判断できるような場合には納税者本人に念のため確認しておいた方がよいかもしれません。(役員といえども来年の所得は見込みでしかありませんので、その点については断言せずに判断を本人に委ねましょう。大切なことは、2つ選択肢があったことについて「言ってくれたらよかったのに。」と後から非難されるのを回避することです。)

収入が少ないのに保険料の負担が大きい人

その会社での収入金額より保険料の額が大きい人がごく稀にいます。
転職してきた人の場合、前職の源泉徴収票の提出漏れがないか確認しましょう。このご時世、長期の失業期間となることもあり得ますので、さらりと確認するのがよいです。
また、実は本業はフリーランスの人がその会社でアルバイトをしているのかもしれません。その場合には源泉徴収票に印字されると楽だからマル保を提出したのかもしれません。
配偶者の扶養に入っている人の場合は、深く考えずに自分名義のものを自分の勤務先に提出したのかもしれません。名義にかかわらず保険料の支払いをした人が控除を受けることができるのですが、「実際のところ、どうですか?」と納税者本人に確認してもらいましょう。「配偶者が負担しているなら、配偶者の税金計算に入れられるのですよ?」と。

年末調整の資料を提出した後に退職した人がいる

退職日との給与の支給日を確認して、「年末調整の対象となる人」に該当する場合には年末調整をし、該当しない場合には控除証明書を早目に返却しましょう。
12月中に到来する給与の締日以後に退職し、1月にもう一度給与の支給がある場合、原則通り支給日基準で年末調整をしているならば、翌年1月の給与計算が終わったら速やかに源泉徴収票を発行して本人に交付しましょう。本人は前年中に退職しているため、源泉徴収票の交付を請求し忘れて(または請求すべきとは知らず)、転職先にしないために翌年の年税額計算が正しく計算されない、ということが起こり得ます。

各種控除を入力したのに年末調整されない・税額計算に反映されない

その人の給与収入はいくらでしょうか?給与収入が2000万円を超える人は年末調整の対象とはならず、年末調整ソフトでも通常は年末調整を行わないように自動的に判断されます。月々の給与から差し引かれる社会保険料等の金額は集計・印字されますが、マル保から入力する項目は源泉徴収票に印字すらしてもらえない場合も多いです。
役員の確定申告を請け負っている場合には、確定申告まで控除証明書をそのまま保管することもよくあるので、事務所の方針を確認しましょう。経営者の一族ではない場合等、自分で確定申告をするという人には、給与収入が2000万円を超える人は確定申告が必要な旨伝えて資料を返却しましょう。返した・返してない、で揉めないように、注意・工夫してください。
給与収入が2000万円以下の場合、単純にその人が「乙欄」「年末調整しない」という設定になっていることもありますので、「社員情報」など個人の設定をもう一度確認しましょう。

まとめ

以上、2回にわたってマル保の解説をしました。奥が深くて書ききれないのが年末調整。また、実務上はどうしているかというのを書けるところと書けないところがあるのも年末調整。今回は、色んな意味で「書ける限り」のことを書き尽しました。
関与先の従業員についての年末調整のミスは、従業員と経営者の信頼関係にもかかわってくるため、普段は温厚な経営者も敏感になることがあります。それほど重要な業務であり、だからこそ業務を依頼されているのだということを肝に銘じて作業を行ってください。
年末年始にしか作業しないため、3年くらい経験してやっと年末調整業務が知識として定着します。それでも、所得税法受験者でなければ『年末調整の手引き』に頼ってしまう、毎年確認する項目もあります。でも、それでいいと思います。何も確認せずにうろ覚えの記憶を正しいと思い込んで突き進むより、ある種の謙虚さを以って、自信のないことは一つ一つ確認しながら、年末調整業務に臨んでください。

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