納期特例の実務ポイント 担当者向けに留意点・勘どころを解説

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8chunmama

こんにちは。8chunmama(はっちゅんママ)です。

7/10まであと数日。納期の特例の作業は進んでいますか?
入力スタッフさんが在籍する事務所では、担当者はスタッフさんが入力したデータをチェックし、納付書を顧問先に手渡し・郵送・電子申告でゼロ納付、ということもあるかと思います。そのとき、業務が多すぎて「どうせ年末調整があるから(以下自粛)」と、ほぼノールックで作業にゴーサインを出してはいないでしょうか?
今回は担当者・指導者向けに、納期特例、特に7/10納付分についての源泉所得税の納期の特例に関する実務ポイントを、納付書作成後からでも間に合うものを中心にご紹介していきます。
※令和3年の上期の納期限は、7/10が土曜のため7/12となります。

目次

入力されたデータは本当に正しいか

給与のデータが完了して、数字もチェックして、合っていたから大丈夫。・・・本当にそうでしょうか?数字と数字が合っていても、思わぬ落とし穴があります。
チェックポイントは以下の4つです。今回は一部の項目のみ深掘りします。

  • 課税通勤費と非課税通勤費の取り扱いは正しいか
  • 社会保険料と源泉税額を逆に入力していないか
  • 給与を受け取っている人を入れ違いにして入力していないか
  • 給与天引きのiDeCo(イデコ)プラスは「社会保険料等の金額」として集計されているか
    給与から直接控除(天引き)される社会保険料“等”の金額には、実は給与天引きのiDeCoプラス等も含まれています。掛金の本人負担分を給与とは別途預かっているものや、社長が個人の預金口座で自動振替にしているものは対象外です。このほか、建設国保などでも同様です。
    この場合、年末調整においては源泉徴収簿の右側の「⑫のうち小規模企業共済等掛金の金額」欄の( )内に金額の入力が必要です。また、保険料控除申告書の「小規模企業共済等掛金」欄に入力してしまうと、年末調整ソフトでは「申告による小規模企業共済等掛金の分⑭」欄に転送されてしまい、二重に社会保険料等を控除することになりますので注意が必要です。
    会社が毎月の源泉税額を算出する際に、上記のiDeCoプラス等を「社会保険料等の金額」に含めているかは、税額表と突き合わせてみないと分かりません。給与ソフトを適切に使用している場合、自動的に社会保険料等の金額として考慮して税額計算をしていることもあります。

「社会保険料等の金額」の範囲については、

の記事に、根拠条文等が紹介されています。
完璧な解説を目指すと、この記事のコピペになってしまうくらい、しっかりと解説されていますので、このブログでのご紹介は割愛いたします。

元のデータはあるべき姿か

入力されているデータが元の資料と一致していても、その資料がそもそも間違っているということは中小企業では多々あることです。
鵜吞みにせずにチェックすべきポイントは次の10点です。こちらも今回は一部の項目のみ深掘りします。

  • 役員やみなし役員(オーナー役員の配偶者など)の給与は定期同額給与の要件を満たすか
  • 子どもが生まれたからといって、「扶養親族等の数」が増えていないか
    0歳の子どもは控除対象扶養親族ではありませんので「扶養親族等の数」にはカウントされず、毎月の源泉所得税の額は減りません。
  • 健康保険料率(介護保険料率を含む)は正しく変更されているか
    都道府県によっては、前年と同じ率の場合もあります。
    また、令和3年度の雇用保険料率は令和2年度から変更はありません。
  • 介護保険の被保険者になった人から、介護保険料を徴収しているか
  • 標準報酬月額で2等級以上相当の昇給・減給に対し、適切に社会保険料は変更されているか
  • 毎月変動する給与の額に対し、毎月標準報酬月額を変えて社会保険料を徴収していないか
    ※社会保険料は原則、連続する3か月の平均により算出した標準報酬月額が2等級以上変動した場合にのみ、月額変更届を提出し、4か月目の給与から新たな等級を適用することになります。(新型コロナによる休業等で例外の取り扱いがあります。)
  • 通勤手当も考慮した標準月額報酬となっているか
  • 役員や役員の同居親族から雇用保険を徴収していないか
  • 週20時間以上・30時間以上勤務していそうな支給金額の場合
    毎月源泉所得税が発生しているようなアルバイトやパートの従業員について、雇用保険や健康保険・厚生年金保険への加入は適正に手続きされているでしょうか?
    社会保険の手続等は社会保険労務士さんの分野ではありますが、関与先への社会保険についての一般的な知識の共有であれば、税理士事務所が行っても特に問題ありません。
    まずは雇用契約上の勤務時間がどうなっているかをベースに考えますので、繁忙期に勤務時間が多くなっているなどの場合もあり、早合点は禁物ですが、アンテナを張っておきたいところです。疑問に思う状況の人については念のため確認をし、何度も聞かなくてよいよう、データ等にメモを残しておきましょう。
    ※社労士業務は有償独占であり、社労士の在籍していない事務所では、算定基礎届や被保険者資格取得届等の代理提出を有償で行えません。毎月税理士の顧問報酬を貰っている関与先の場合は、無償での作成・代理提出であっても顧問料を対価に有償で行ったと捉えられますので、気を付けましょう。
  • 乙欄源泉の人から雇用保険を控除していないか
  • 資料の回収漏れはないか
    元のデータと入力データが合っていても、資料の回収漏れがあっては困ります。
    給与明細をください、とお願いしたら、給与明細しか資料が提供されないかもしれません。
    決算賞与・夏季賞与・報奨金など、具体的に名称を挙げて支給の有無の確認をし、資料を回収しましょう。
    また、このコロナ禍ですから、赤字や資金繰りの悪い会社に賞与の支給の有無を聞くと、そんな余裕はないと怒られてしまうこともあります。かといって、賞与がないと決めつけた聞き方も癇に障るかもしれません。しかし、確認しないわけにはいきませんので、言い回しにくれぐれも気を付けて聞きましょう。それでも万が一怒られたら、後に引き摺らないようにしましょう。きっと虫の居所が悪かっただけです。

退職者・新入社員について

退職者や新入社員に関してのチェックポイントや、納付額報告時にヒアリングすべきことは次の5つです。

    • 退職者の退職日はいつか
      年末調整の作業でも間に合いますが、退職者がいると分かった時点で退職日を確認しておきましょう。社会保険の退職月分を預かるべきかどうかの判断材料になり、暦年をまたいだトラブルを回避できます。
      当月分を翌月に預かる会社もありますので、末日付退職だったら退職月の給与から社会保険料を預からない、というわけではありませんので注意しましょう。
    • 前年の12月に退職した人に対しての留意点
      翌月支給のため1月に給与を支給していませんか?前年12月に預かる必要のなかった社会保険料を1月に返金していませんか?
      1月に給与を支給している場合には、早目に源泉徴収票を作成し、ご本人に交付してください、と関与先へ渡しましょう。年末調整の作業を始めてから発行すべきことを思い出したのでは、転職先の年末調整に間に合わない場合があります。
      もし今年に給与がなく前年の社会保険料を返金していると分かった場合には・・・困りましたね。気づいたタイミングやその退職者のその後の転職や確定申告の有無、元・勤務先との関係性にもよると思います。所内の税理士等と相談し、事務所としての対応を検討してください。
    • 市県民税の特別徴収は適切に処理しているか
      退職者については、住民税の異動届の提出が必要ですし、退職月によって住民税の残額を適正に処理しなければなりません。
      逆に、中途採用の場合、特別徴収を前職から引き継ぎや、普通徴収から特別徴収に切り替えを希望する従業員がいれば、その手続きが必要です。
    • 新入社員から扶養控除等申告書を預かっているか
      扶養控除等申告書が提出されていない場合、その者の源泉税額は乙欄となります。
      名前しか分からない新入社員について納期の特例の集計作業は先行して進めてもよいですが、その会社で甲欄とすべき場合には必ず提出をしてもらいましょう。年末調整時に回収しようとすると、うまく情報が伝わらず、翌年分しか書いてもらえないこともあります。また、住所や生年月日などのデータは今のうちに入力しておいた方が、バタバタする時期に処理するよりミスを起こしにくいでしょう。
    • 退職者に退職金を支払っている場合、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているか
      この申告書がなければ、たとえ1万円の退職金であっても、その退職金の額につき20.42%の源泉所得税が発生します。支給額を手取り額として源泉所得税を預かっているべき状態となり、税務調査の指摘事項となります。源泉徴収義務者であるその会社が、源泉税の負担をすることになるのです。
      このようなことがないよう、面談回数の少なく退職者に気付きにくい関与先や、人の入れ替わりが激しい関与先には、未記入の申告書を1枚、予め渡しておきましょう。
      また、退職者に対する「餞別」も、実質は退職金という指摘を受けると思われますので注意が必要です。もし結婚退職であれば、社会通念上妥当な金額の範囲内の結婚祝は、福利厚生費となります。

    扶養親族の異動について

    1~6月は4月を含む期間ですので、就職により扶養親族の異動もあり得ます。
    扶養親族が減る方向の異動は、年末調整で不足額(追加徴収)の原因となるため、早目の把握が必要です。年末調整で年税額を算出できでも、このタイミングで修正すべきなのは、年末調整で現金還付をしている会社の場合、家計に入るのではなく従業員本人のお小遣いとなる家庭もあり、不足になった場合に問い合わせが来ることが多いからです。
    留意点は以下の2つです。

      • 扶養親族が就職した場合
        扶養親族が減ると毎月の源泉税の額が変わるはずですが、扶養に入れたままにすると年末調整で不足額が生じます。
        就職は大学卒業のタイミングとは限りませんし(高校・高専・専門学校卒業など)、大学卒業のタイミングも浪人・留年・医歯薬学部などの6年制など人それぞれのタイミングです。アタリを付けてもいいですが決めつけはいけません。
        健康保険の被扶養者から外れるため、会社は扶養親族の就職を把握しているはずですから、お子さんが独立した従業員さんがいないか確認しましょう。
      • 扶養親族が死亡した場合
        同居老親等の扶養親族が亡くなることも、残念ながら実務上あります。会計データ上で福利厚生費として従業員への御香典が出ていなかったでしょうか?
        その年中に亡くなった場合は その年の扶養控除の対象にはなりますが、忘れないうちに扶養控除等異動申告書の右端「異動月日及び事由」欄に、亡くなった日を記入し、翌年の税額に反映できるようにしておきましょう。

      士業等の報酬源泉・退職金

      給与資料から数字を集計しただけでは、士業の報酬源泉等を納付し忘れることがあります。税理士法人で顧問料から報酬源泉がなくても、他の士業等の報酬源泉がある場合があります。会計データやヒアリングで確認し、士業報酬等の源泉税の納付漏れがないよう、最低限次の5つについて確認しましょう。また、会計データが手取り額のみの処理になっていることもありますので、源泉税を含めた仕訳になっているか、も注意が必要です。

      • 退職金の源泉所得税
        退職金は納期の特例の対象となります。納期特例用の納付書にも、ちゃんと4段目に退職手当の欄があります。役員退職金に多いかと思いますが、退職所得控除を適用しても源泉税が発生するような、金額の大きい退職金がなかったか、注意しましょう。
      • 新規の関与先の場合、従前の開業税理士(=個人)に支払った税理士報酬
        「ウチは税理士法人だし、他に士業の関与もないし、報酬源泉は大丈夫~。」と油断するとハマる落とし穴です。従前の事務所が解約になった理由が杜撰な仕事ぶりというのであれば、過去に納付もれの源泉税があることも。会計データにも目を通しておきましょう。
      • 社労士報酬
        通常業務のほか、コロナ関連で雇用調整助成金申請等に対する報酬が発生している場合があり、例年と同額とは限りません。
      • 消費税抜1万円以上の司法書士報酬
        司法書士報酬は、税抜1万円を控除した金額に対して源泉税を徴収します。
        毎月の顧問料の支払いがある法人は稀ですが、開業時の登記、役員変更や本支店の移転登記、不動産売買や抵当権設定など、イレギュラーに発生するものがあり、税理士事務所で記帳代行や月次面談をしていない会社では注意が必要です。登録免許税や印紙代、切手代や交通費の実費請求があり、手取り額から逆算が難しいこともありますので、明細の確認が必要です。
      • 外注等の報酬源泉
        個人に対する外注費・外交員報酬・コンサルティング料などを支払っている場合、源泉徴収しなければなりません。しかし、これらの報酬(コンサルティング料については一定のもの)については、源泉所得税の納期の特例は適用されず、原則どおり支給日の翌月10日の毎月納付です。納付は滞っていないか、確認しておきましょう。

      会計データとの照合

      以上の1~6のポイントをクリアしていても、過去に納付等の間違いがあったり、年末調整の超過額があったりしては、会計データの預り金がキレイにはなりません。
      入力担当者が会計データの預り金(源泉所得税)がゼロになるかを納付書作成前に見て、その旨を報告してもらうのが理想ですが、それが難しい状況の場合には担当者がチェックしましょう。どこをどうチェックしているか、その入力担当者に一度隣で見てもらうのもよいかもしれません。
      また、源泉所得税以外の預り金の補助科目(枝番)・給与・賞与・退職金・支払報酬料・支払手数料など、「預り金(源泉所得税)」以外の科目にも目を通しましょう。

      まとめ

      たかが納期特例、されど納期特例。データの集計が合っていればいいのではありません。きちんと納期特例の段階でチェックしておけば、大きな問題を防げることもあります。
      納期特例の作業自体のマニュアルは探せばありますし、先輩職員が教えてくれます。しかし、そこから一歩先のところを見るための詳細なマニュアルは、ネット上にはこれまでありませんでした。(おそらく。)
      私も新人時代には教わった通りに粛々と作業していただけですが、経験を重ねていくうち、社会保険を含めた色々な事を総合的に考えられるようになって、何か問題があれば違和感を持てるようになりました。何年か実務を積んだ頃から身についたその経験則を、皆さんの実務にお役立ていただければと今回は記事にしました。
      知識や経験の共有をこれからも続けていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

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