年末調整の実務ポイント① 保険料控除申告書 その1

実務
8chunmama
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こんにちは。8chunmama(はっちゅんママ)です。

今年も年末調整の時期がやって来ました。年末調整は国税庁が毎年『年末調整の手引き』を発行し、各事業者の総務・労務担当者や税理士事務所のスタッフが業務の参考にすることができます。しかし、それを読むだけでは年末調整のミスを防いだり源泉所得税以外の税務を正しく行ったりすることはできません。
このシリーズでは、年末調整の場数を踏むことで身に付く実務ポイントをお伝えしていきます。ご自身は慣れていらっしゃる方でも、後輩さんに情報共有するのにお役立ていただければ幸いです。
まず最初に解説していくのは「保険料控除申告書」(以下、「マル保」)です。
少し深掘りしていますので、年末調整を初めて経験する人が作業前に読むと、何を言っているのか意味不明と思われるかもしれません。(^^; ですので、2年目以降の方や、今年が初めてだけれども既に何社か軽い会社の年末調整業務を経験している方におすすめの内容となっています。
経験則を含めて盛り込んでいたらとても文章が長くなりましたので、マル保については2回に分けてお届けします。

※年末調整の各書類の記入方法は他に分かりやすいサイトがあるのでこちらでは解説いたしません。※この記事は令和3年11月15日現在の法令に基づいて作成しています。

はじめに

保険料控除も扶養控除も、前年と同じか、前年資料が参考になることが多々あります。前年の保険料控除申告書(源泉徴収簿)を会社から預かり、それを見ながら作業すると防げるミスもあります。
それが難しい場合には、前年のデータを参照できる場合には画面を開きながら資料のチェックをし、「年末調整一覧」(保険料控除の額等が人別に分かるもの)を印刷して前年と同じか、異なるなら何が変わったのかをメモしておくとよいでしょう。
人別に年末調整の項目を前年データと比較できるソフトであれば、それは是非活用しましょう。

上段 氏名等の記入欄

サラッと流してしまいがちなこの欄ですが、案外重要です。

給与支払者の法人番号

ごくまれに、この欄に自分のマイナンバーを書いてしまう人がいます。法人番号は13桁、個人のマイナンバーは12桁ですので1桁余り、途中で気付いて二重線で消してあることも。しかし、税理士事務所によっては、マイナンバーという機密情報について厳重に取り扱っている場合があります。マイナンバーが書かれていたときの事務所の方針がどのようなものか、一度確認しておいたほうが良いでしょう。

氏名欄(社員情報等より入力)

クリップ留め等で回収されていると氏名欄をあまりよく見ずに書類を扱ってしまいがちですが、別の人の扶養控除等申告書とセットで留めていないか、必ず最初に確認しましょう。
なお、今年のうちに結婚して改姓された方は、前年の扶養控除等申告書の氏名と異なっており、当年のマル扶とは氏名が一致しています。住所も変わっている可能性が高いですが、生年月日で同一人物かを確認し、当年12月現在の名字に訂正しましょう。そして、源泉徴収票の「摘要欄」に相当する年末調整ソフトの項目に「旧姓:〇〇」と入力しておきます。
また、“達筆な人”の場合、控除証明書を見て何という字か解読するチャンスです。読みやすい字の人で普段は自ら略字を使っている人も、保険契約の際に戸籍上の正式な字(異体字)で契約していることもあるので、そちらも控除証明書の印字を確認しましょう。(ワタナベさん、など。)ただし、異体字を使用すると電子申告の際にエラーになることもありますので、事前に「スキーマエラーチェック」(魔法陣の場合)等をしておきましょう。中には戸籍上の漢字にこだわる人もいらっしゃるので、電子申告の便宜上別の字を使用した旨、ご本人に渡される書類に付箋でメモしておくと安心です。

住所欄(社員情報等より入力)

住所の数字も、“達筆な人”の場合は解読が難しい傾向にありますので、控除証明書が宛先と切り離されていない場合には入力したデータが合っているか確認しましょう。
また、マル保には記入欄がありませんが、郵便番号が未登録の場合には控除証明書の宛先欄を参照すると検索する手間が省けます。

資料はその人のものか?

控除証明書等の資料を貼り付けず、人毎に封筒やファイルに入れて回収されている場合があります。チェック作業はしやすくてありがたいのですが、この場合は丸ごと他の人と入れ替わってしまう危険もありますので、資料一式と申告書の名前が一致しているかを必ず確認しましょう。
代表者の家族内なら、処理後に資料の入れ替わりに気づいても訂正と謝罪で事なきを得ることもありますが、一般の従業員どうしの資料の入れ替わりは個人情報漏洩につながりますので注意が必要です。
また、家族経営の場合は、一家全員分がまとめて一つの袋に入っていて保険料控除申告書は名前以外白紙、もしくは申告書自体が全く作成されていない、ということも。人別にクリップ留めしてくれていることもありますが、どの保険契約について誰が控除を受けるのか、必ず確認しましょう。

「一般の生命保険料」の欄

他の欄にも共通することもこちらの項目でご紹介します。

それは今年のものか?

たまにあるのが、預かった控除証明書が前年のものだということ。前年提出しなかった控除証明書をうっかり提出してしまう人もいますので、「〇年分」の印字を必ずチェックしましょう。

月払いの場合、入力するのは年間の「申告額」

保険料毎月払いしている場合、9月に支払った分までしか「証明額」欄に印字されていません。しかし、自動振替にしていることが通例であり、年間に支払う見込額である「申告額」を年末調整では入力します。

「配当金」は支払った保険料の額から控除する

多くの保険会社の控除証明書には「申告額」欄がありますので、そこを転記すればよいのですが、この「申告額」欄の存在意義は、上記2-2で月払契約にしている人のための他、配当金があった場合には「支払った保険料の額」から「配当金相当額」を控除した金額を分かりやすくするため、ということもあります。
年払い契約の場合には「証明額」が「配当金相当額」控除後の金額となっています。

年末調整ソフトに最低限入力すべきこと

マル保を納税者本人が記入している場合、年末調整ソフトに入力するのはほぼ数字だけ、という事務所もあるかもしれません。そちらが多数派かもしれませんし、本人記入が原則の書類なので、年末調整においては税法上問題ありません。
ただし、今年の年末調整の年税額はそれで正しく計算できるかもしれませんが、後で困らないよう、余裕があるならば、必要に応じて下記の項目を入力しておきましょう。

不足資料が頻繁にある人の場合・・・「保険会社等の名称」
〇〇の控除証明書がありません、と翌年以降請求しやすいように、略称でもいいので書いておきましょう。

役員の場合・・・「保険金等の受取人」
その役員が亡くなった際、相続税・贈与税の課税関係を把握するのに役立ちます。

また、新制度・旧制度の別を入力しなければソフトが正しく税額計算をしてくれませんので、一通り入力が終わったら必ず印刷プレビューをして税額計算されているかを確認をしましょう。

保険料控除を受けられるのは、保険料負担者

保険料控除を受けられるのは、契約者・被保険者・受取人ではありません。保険料を実際に支払った者です。妻が契約者になっている保険でも、その妻が働いておらず保険料を納められない場合には夫が保険料を負担する場合もあるでしょう。保険契約者が年末調整対象者の家族である場合には、保険料負担者であることを念のために確認するのが基本ですが、性善説で確認しない担当者もいるかと思います。そこは事務所の方針に従いましょう。(※)
ただし、年末調整に直接関係のない「保険金の受取人」ですが、保険料の負担者が異なる場合は相続・贈与の問題が絡んできます。税目は違っても、過去のマル保を遡って調査される可能性はゼロではありません。保険料控除を代表者と配偶者の年収によって毎年のように控除を付け替える、などということは止めましょう。保険料控除の税効果の数千円~数万円が元で、多額の贈与税・相続税が発生することになりかねません。

※税務上の判断の責任は担当税理士や税務担当者を監督する所長税理士・社員税理士が負うべきところですが、事務所や担当者の方針に従うにせよ、契約者と納税者が同一人物でないことにあなたが気付き担当者にどうすべきか確認を取った、という痕跡は残しておいたほうがあなたの身を守れます。これは他の業務についても言えることです。聞いていない言っていないと言われないよう、いつ誰に何と確認をしたか、メモを残しておきましょう。

納税者本人の計算結果が間違っていたら

これは非常によくあることです。端数処理で納税者有利にすべきところを切り捨てて記入していたり、新旧の計算式を逆にしていたり、原因は様々です。もう一度、自分の入力(または手計算)した数字に間違いがないか確認し、正しい金額を回収したマル保に書き込みましょう。ペンで書くか、シャーペン書きするか、事務所の方針を確認しましょう。(これは税務上の判断ではなく単なる慣習の問題ですので、指示があったというメモは不要です。忘れがちな方はご自身の業務マニュアルにそっとメモしておきましょう。)

少額だから、と控除証明書を省略して提出してくれていない

旧制度の一般の生命保険料控除では、年間の正味払込保険料(=申告額)が1契約9,000円以下の場合は控除証明書の添付は不要となっていますので、証明書を提出してくれない納税者さんもいます。添付不要と書いているからであってご本人に悪気はないとは思うのですが、実はその保険契約が新制度対象の一般の生命保険料だったり、介護保険料(=必ず新制度)だったり、自ら記入していることと添付しなくてもいい要件が矛盾している場合もあります。また、配当がある契約だと前年同額とは限らないという別の問題もあるので、金額にも確証が持てません。
保険会社によっては添付不要の対象となる契約についてはそもそも控除証明書を発行してくれないという場合もあるようですが、マル保への記入の省略が多くて内容が曖昧だったり、何か矛盾する点があるならば、可能であれば納税者に控除証明書を提出してもらえるか確認するようにしましょう。

「介護保険料」欄

基本は「一般の生命保険料」欄と同じです。
介護保険料は新制度における区分ですので、新・旧の記入欄はありません。
最大のポイントは、個人の確定申告を任されている役員の場合には、「保険等の種類」を年末調整ソフトに入力しておく、ということです。もしその役員が入院や手術を受けた場合、医療費控除を適用することになるかもしれませんが、実は入院給付金が支払われて医療費控除の金額を計算したら0円になる、ということもあり得ます。資料返却後も確認しやすいよう、「保険等の種類」は入力しておきましょう。また、入院の事実(時期、期間、入院の理由)については、その役員と税務担当者とのコミュニケーションが重要となってくることもお忘れなく。
余談ですが、がん保険の「がん診断給付金」は医療費控除計算の際に「補てんされる金額」に該当しない保険金です。同じがん保険でも、給付事由を確認しないといけませんね。

「個人年金保険料」欄

こちらも基本は「一般の生命保険料」欄と同じです。
所得税の確定申告も任されている役員については「支払開始日」が近い場合には日付も年末調整ソフトに入力しておきましょう。

まとめ

以上、マル保について上段と左側の欄についてのポイントをご紹介しました。年末調整が初めての方には盛りだくさんだったかもしれませんが、こういうことがあるんだなーと読み流していただき、関連するケースが出てきたときに思い出して参考にしていただければ幸いです。

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