会計入力のセルフチェック① 月次入力時の基本 その1

実務
8chunmama
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こんにちは。8chunmama(はっちゅんママ)です。

税理士事務所で初心者が任されることの多い記帳代行業務。懇切丁寧なマニュアルが用意されている事務所は少ないのではないでしょうか。
あまり説明を受けずに前のデータを見様見真似で会計入力をするしかない人、入力業務を教えたいけど時間がない人のために、どの事務所でも共通しているはずの実務のポイントのうち、通常の入力後の基本的なセルフチェックのうち貸借対照表科目について今回はご紹介したいと思います。
決算整理時のセルフチェックは別途記事を作成したいと思っていますが、今回はそうではなく、決算整理には不足する点があるかと思いますのでご注意ください。

セルフチェックの重要性

記帳資料を渡されたら、それを入力して終わり、ではありません。セルフチェックは勿論正しく入力するために重要なのですが、単にそれだけではありません。入力結果は入力者の素質の表れとなり、評価につながります。
知人の所属税理士が、入力スタッフさんについて「1年経っても現預金が合わせられないからお辞めいただいたわ。」と言っていたことがあります。業界が慢性的に人手不足という状況でも、セルフチェックが甘い、もしくは全くしていないと、退職という結果を招くことになるようです。そういうことで簡単にクビにしちゃうんだ、と思うかもしれません。しかし、1年経っても現預金の残高が合わせられないというのも、なかなか怖い話、というのが正直なところです。「現預金の残高を合わせられるかどうか」というのは、最低限の作業ができるかどうかの能力や、間違った入力データに違和感を持てるかどうかのセンスを問う最初のポイント、と言えます。
ある現預金の科目・補助科目の後に何かを入力・修正してうっかり残高が変わってしまうことはあるかと思います。しかし、これは2つの数字を照らし合わせればよいだけで、税区分のように判断を迷うような難しいことではありません。見直す時間を与えられなかったという特殊な状況を除き、できる限り自分で気づいて直したいものです。
ただ、現預金以外についてのセルフチェックについては、慣れている人には当たり前のことでも、何をどうセルフチェックすればよいのかは具体的に教えてもらわなければ初心者には分かりません。とはいえ、人手不足で懇切丁寧に教える時間がない事務所が多いことも実情です。
事務所によって「やり方」は様々ですが、どこの事務所でも共通している最低限のセルフチェックのポイントを把握するお手伝いをこの記事でできればと思っています。指導する立場の人で事務所にマニュアルがなく指導時間もない方も、スタッフさんにこのページの紹介したり印刷をしたりして、所内でご活用いただければと思います。

資産の部

ここから、本題のセルフチェック項目をご紹介していきます。
今回はチェック項目を挙げることを主目的としており、細かな用語解説はしていません。ご了承ください。
なお、セルフチェックといっても自分の入力した月だけ見ればよいものではなく、前の入力データと比較したり、期首から精査したり、前年同月と比較したり、年間推移(月別合計)を見るべき場合もあります。試算表や元帳の表示を適宜切り替えてチェックするようにしてください。

現金

□現金出納帳と残高が一致しているか。
□現金出納帳をつけていない場合、途中で残高がマイナスになっていないか。
→同じ1日のうちにマイナスが一時的に発生するのはOK。最低でも各月末残高は0円以上にするべき。恒常的にマイナスになるならば役員借入金℀の使用を検討するべきでは?

預金

□通帳や取引明細の残高と一致しているか。
→弥生会計でいうメモ欄のように、元帳を出力した時に印字されないところに残高を入力しておくと、一通り入力した後のチェック時に通帳データを再確認しなくて済みます。

受取手形・電子記録債権

□どの手形・電子記録債権(でんさい)が残っているか把握できているか。
□手形・電子記録債権を割り引いた際、売却損・割引料等の差額を計上しているか。
□割引手形℀・裏書手形℀と両建てで使用している場合、期日が到来しているものを相殺しているか。

売掛金

□計上もれしている月はないか
□回収時、振込料や手形送料などを差し引かれていないか。
→差し引かれていたら差額をその会社の過去の処理に合わせた科目で計上する。
□通常より長い期間回収できていない売掛金はないか。
→あれば念のため担当者に報告する。(わざとそのままにしていることもあれば、関与先が集金業務にルーズな場合気づいていないこともある。)

有価証券

□時価評価すべきものはないか。
□取引数などを摘要に入力しているか。

棚卸資産

□毎月棚卸することになっていないか。

立替金

□源泉所得税の年末調整超過額を決算時に振り替えたものがあれば、元に戻さなくてよいか。
□ずっと放置されている立替金はないか。
□住民税・社会保険料等の立替があれば、解消される予定はいつか。

仮払金

□精査できる経費が仮払金のままになっていないか。
□未確定勘定と仮払金を合わせれば解決できるものはないか。
□未確定勘定代わりに使っていて、残高が大幅にマイナスになっていないか。
□負債科目と相殺して消すべきものが残っていないか。

未収入金・未収収益

□計上すべきものはないか。
□洗替すべきものはないか。

前渡金・前払金

□消すべきものは残っていないか。(洗替処理、資産の引き渡しを受けたとき、など。)

前払費用・長期前払費用

□月々償却していくべきものはないか(関与先・税理士事務所により判断が異なります。)
□洗替処理が必要なものはないか
□保険料の資産計上部分は適切に処理したか。

固定資産

□減価償却は毎月すべきか期末に計上するのか。
□少額減価償却資産を取得している場合、その月に償却するのか期末に償却するのか。
□不動産販売業の商品を固定資産として入力していないか。
□減価償却のプログラム等に減価償却資産の登録をしたか。
※固定資産台帳の登録は、耐用年数表の見方や操作方法の説明が必要なため、その時間が取れない繁忙期は「そのまま置いててくれたらいいから。」とだけ言われる場合もあります。
□減価償却の仕訳を課税にしていないか。
□資産の除却・売却の仕訳を適切に処理したか。

出資金

□動きがあった場合、相手先・口数を摘要に入力したか。

差入保証金・敷金

□不動産賃借の新規契約をした場合、補助科目を作成しなくて良いか。

保険積立金・長期前払保険料

□保険料の資産計上部分は適切に処理したか。

繰延資産

□毎月償却すべきものはないか。
※会社法上の繰延資産(創立費・開業費など)は任意償却のため、必ずしも財務諸表論の問題ように毎月(毎期)償却をするとは限りません。

負債の部

支払手形、電子記録債務

□「支払手数料」を「支払手形」と間違って入力して支払手形がマイナス残高になっていないか。
※約束手形を自ら振り出し、支払手形℀を使用する会社は昔に比べ減っています。今でも自社で振り出すのは、建設業など、取引金額が大きく、完成引き渡しに時間が掛かる(=売上の入金より先に支払いが嵩んでいく)業種の場合が多いです。

買掛金

□支払時に振込手数料を差し引いていないか。
→差し引かれていたら差額をその会社の過去の処理に合わせた科目で計上する。
□振込手数料より多めに差し引いて、差益を得ていないか。
→差し引かれていたら差額をその会社の過去の処理に合わせた科目で計上する。

未払金、未払費用

□計上すべきものはないか。
→月末が土休日のため引落されていない社会保険料等の経費の処理を確認。
□洗替すべきものはないか。
□「未払金」と「未払費用」の科目の使い分けを、過去のデータに合わせているか。
→財務諸表論で2つの違いをあれだけ勉強したのに、実務ではこれらが正しく使い分けられているとは限りません。モヤモヤするかもしれませんが、この使い分けは所得金額や消費税額に影響はなく、貸借対照表上いずれも流動資産です。期の異なる財務諸表との比較可能性の担保や、事務所内での処世術の観点から、厳密な使い分けを我慢して長いものに巻かれることも必要になってきます。前受金と前受収益、前渡金・前払金・前払費用にも同様のことが言えます。将来、自らが担当者になって、新規開業の関与先を担当するようになったら、正しい知識に基づいて会計処理をしましょう。

未払法人税等、未払消費税等、法人税等充当金、納税引当金

□納付時に適切に処理したか。
□納付漏れ(納期限を過ぎても未払のまま残っているもの)はないか。

前受金、前受収益

□消すべきものは残っていないか。(洗替処理、翌月の売上で差し引いた受けたとき、など。)

仮受金

□精査できる入金がそのままになっていないか。
□未確定勘定と仮受金を合わせれば解決できるものはないか。
□未確定勘定代わりに使っていて、残高が大幅にマイナスになっていないか。
□資産科目と相殺して消すべきもの・収益科目に振り替えるべきものが残っていないか。
□不動産仲介業者が家賃の回収を「仮受金」としているとき、大家さんに振り込む際に振込手数料や管理手数料を計上した適切な処理にしているか。
□保険代理店や不動産仲介業者が保険料を「仮受金」としているとき、保険会社に振り込む際に振込手数料や手数料を計上した適切な処理にしているか。

預り金

□源泉所得税の残高は合っているか。
□住民税の残高は合っているか。
□ずっと残っているものはないか。(納付漏れの確認)
□社会保険料を適切に処理しているか。
→預り社会保険料を法定福利費のマイナスで処理する場合がある。預り金で処理する場合は納付時に適正額を預り金から振替。

短期借入金・長期借入金

□返済期限が1年以内の手形借入を長期借入金にしていないか。
→資料が不足していても、通帳の印字、収入印紙の金額や一括返済ではないことなどから、手形借入か長期借入金(証書借入)か、ある程度の判断ができます。
□元利均等の返済にもかかわらず、元金均等と思い込んで前月の元本返済額をコピペしていないか。□返済明細と残高は合っているか。
□(返済明細と毎月照合できない場合)元金均等返済分の毎月返済額は同じか。補助科目のつけ間違いをしていないか。
□新たな借入に補助科目を作成したか。

役員借入金

□マイナス残高になっていないか。
→役員の私費経費の自己否認のために起きる現象。貸付金℀を使うか要検討。
□複数の役員別に補助科目が作られていて使い分けられているのに、思い込みですべて代表者分としていないか。

純資産の部

利益準備金

□配当をしたことがない会社なのに、利益準備金が出てきていないか。
→新規顧問契約の会社の残高登録時によく起きるミス。繰越利益剰余金を利益準備金として登録している可能性大。

まとめ

今回は貸借対照表科目のセルフチェックのポイントについてご紹介しました。
セルフチェックは、残高がある科目と、残高がゼロでも期中に動きがある科目すべてについて行わなければなりません。上記の科目に限らず、他の科目についても目を通して、処理が妥当か確認してください。
また、入力を通常の終業時間を過ぎて行い、本当に限界のタイムリミット(専門学校の授業開始時間や保育園のお迎えリミットなど)が来てデータを担当者に渡して帰る場合は、最後の再確認までできていない旨、一言伝えておきましょう。入力しっぱなしはダメだという意識があることは分かってもらえるかと思いますので、気づけたはずのミスがもし何かあっても心証が変わります。
全ての科目に目を通すと言っても、慣れればあまり時間を掛けずにチェックできるようになります。数をこなしてスキルアップを目指してくださいね。

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